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いかにせむ 葛の裏吹く秋風に下葉の露の隠れなき身を  恋歌三1166番 相模 (巻第十三)   2019/4/21−20xx/0/0

和歌番号 和歌
1149 忘れじの行末まではかたければけふを限りの命ともがな
わすれじの ゆくすえまでワ かたければ きょうをかぎりの いのちともがな
「わすれないよ」と言うあなたの言葉がいつまでも続くと思われないので、逢った今日限りの命であって欲しいものです。
1150 限りなく結びおきつる草枕いつこのたびを思ひ忘れむ
かぎりなく むすびおきつる くさまくら いずこのたびを おもいわすれん
1151 思ふには忍ぶることぞ負けにかる逢ふにしかへばさもあらばあれ
おもうにワ しのぶることぞ まけにかる あうにしかえば さもあらばこそ 
1152 きのふまで逢ふにしかへばと思ひしをけふは命の惜しくもあるかな
きのうまで あうにしかえばと おもいしを きょうはいのちの おしくもあるかな
1153 逢ふことをけふ松が枝のたむけ草幾夜しをるる袖とかは知る
おおことを きょうまつがえの たむけぐさ いくよしおるる そでとかワしる
1154 恋しさにけふぞ尋ぬる奥山の日陰の露に袖は濡れつつ
こいしさに きょうぞたずぬる おくやまの ひかげのつゆに そでワぬれつつ
1155 逢ふまでの命ともがなと思ひしはくやしかりけるわが心かな
あうまでの いのちともがなと おもいしワ くやしかるける わがこころかな
1156 人心うす花染めの狩衣さてだにあらで色や変らむ
ひとごころ うすばなそめの かりごろも さてだにあらで いろやかわらん
1157 逢ひ見てもかひなかりけりうばたまのはかなき夢におとるうつつは
あいみても かいなかりけり うばたまの はかなきゆめに おとるうつつワ
1158 なかなかの物思ひそめて寝ぬる夜ははかなき夢もえやは見えける
なかなかの ものおもいそめて ねぬるよワ はかなきよるも えやワみえける
1159 夢とても人に語るな知るといへば手枕ならぬ枕だにせず
ゆめとても ひとにかたるな しるといえば たまくらならぬ まくらだにせず
1160 枕だに知らねばいはじ見しままに君語るなよ春の夜の夢
まくらだに しらねばいわじ みしままに きみかたるなよ はるのよのゆめ
1161 忘れても人に語るなうたたねの夢見てのちも長からじ夜を
わすれても ひとにかたるな うたたねの ゆめみてのちも ながからじよを
1162 つらかりし多くの年は忘られて一夜の夢をあはれとぞ見し
つらからし おおくのとしワ わすられて ひとよのゆめを あわれとぞみじ
1163 今朝よりはいとど思ひを焚きまして歎きこりつむ逢坂の山
けさよりワ いとどおもいを たきまして なげきこりつむ おおさかのせき
1164 蘆の屋のしづはた帯のかた結び心やすくもうちとくるかな
あしのやの しずはたおびの かたむすび こころやすくも うちとくるかな
1165 かりそめに伏見の野辺の草枕つゆかかりきと人に語るな
かりそめに ふしみののべの くさまくら つゆかかりきと ひとにかたるな
1166 いかにせむ葛の裏吹く秋風に下葉の露の隠れなき身を
いかにせん くずのうらふく あきかぜに したばのつゆの かくれなきみを 
1167 明けがたき二見の浦に寄る波の袖のみ濡れて沖つ島人
あけがたき ふたみのうらに よるなみの そでのみぬれて おきつしまびと
1168 逢ふことのあけぬ夜ながら明けぬればわれこそ帰れ心やはゆく
おおことの あけぬよながら あけぬれば われこそかえれ こころやワゆく
1169 秋の夜の有明の月の入るまでにやすらひかねて帰りにしかな
あきのよの ありあけのつきの いるまでに やすらいかねて かえりにしかな
1170 心にもあらぬわが身のゆき帰り道の空にて消えぬべきかな
こころにも あらぬわがみの ゆきかえり みちのそらにて きえぬべきかな
1171 はかなくも明けにけるかな朝雲のあきてののちぞ消えまさりける
はかなくも あけにけるかな あさぐもの あきてののちぞ きえまさりける
1172 朝露のおきつる空も思ほえず消えかへりつる心まどひに
あさつゆの おきつるそらも おもおえず きえかえりつる こころまどいに
1173 おきそふる露やいかなる露ならむ今は消えねど思ふわが身を
おきそうる つゆやいかなる つゆならん いまワきえねど おもうわがみを
1174 思ひ出でて今は消ぬべし夜もすがらおきうかりつる菊の上の露
おもいいでて いまワけぬべし よもすがら おきうかりつる きくのうえのつゆ
1175 うばたまの夜の衣をたちながら帰るものとは今ぞ知りぬる
うばたまの よるのころもを たちながら かえるものとワ いまぞしりぬる
1176 みじか夜の残りすくなくふけゆけばかねてものうき暁の空
みじかよの のこりすくなく ふけゆけば かねてものうき ありあけのそら
1177 明くといへばしづ心なき春の夜の夢とや君を夜のみは見む
あくといえば いずこころなき はるのよの ゆめとやきみを よるのみワみん
1178 今朝はしも歎きもすらむいたづらに春の夜ひと夜夢をだに見で
けさワしも なげきもすらん いたずらに はるのよるひと よゆめをだにみで
1179 心からしばしとつつむものからに鴫の羽掻きつらき今朝かな
こころから しばしとつつむ ものからに しぎのはねかき つらきけさかな
1180 わびつつも君が心にかなふとて今朝も袂を干しぞわづらふ
わびつつも きみがこころに かなうとて けさもたもとを ほしぞわずらう
1181 手枕にかせる袂の露けきは明けぬと告ぐる涙なりけり
たまくらに かせるたもとの つゆけきワ あけぬとつぐる なみだなりけり
1182 しばし待てまだ夜は深し長月の有明の月は人まどふなり
しばしまて ばだよワふかし ながつきの ありあけのつきワ まどうなり 
1183 おきて見ば袖のみ濡れていとどしく草葉の玉の数やまさらむ
おきてみば そでのみぬれて いとどしく くさばのたまの かずやまさらん
1184 明けぬれどまだきぬぎぬになりやらで人の袖をも濡らしつるかな
あけぬれど まだきぬぎぬに なりやらで ひとのそでをも ぬらしつるかな
1185 面影の忘らるまじき別れかななごりを人の月にとどめて
おもかげの わすらるまじき わかれかな なごりをひとの つきにとどめて
1186 またも来む秋をたのむの雁だにも鳴きてぞ帰る春のあけぼの
またもこん あきをたのむの かりだにも なきてぞかえる はるのあけぼの
1187 たれゆきて君に告げまし道芝の露もろともに消えなましかば
たれゆきて きみにつげまし みちしばの つゆもろともに きえなましかば
1188 消えかへりあるかなきかのわが身かな恨みて帰る道芝の露
きえかえり あるかなきかの わがみかな うらみてかえる みちしばのつゆ
1189 朝ぼらけおきつる露の消えかへり暮れ待つほどの袖を見せばや
あさぼらけ おきつるつゆの きえかえり くれまつほどの そでをみせばや
1190 庭に生ふる夕かげ草の下露や暮れを待つまの涙なるらむ
にわにおうる ゆうかげくさの したつゆや くれをまつまの なみだなるらん 
1191 待つ宵に更けゆく鐘の声聞けば飽かぬ別れの鳥はものかは
1192 これもまた長き別れになりやせむ暮れを待つべき命ならねば
1193 有明は思ひ出であれや横雲のただよはれつるしののねも空
1194 大井川ゐせきの水のわくらばに今日は頼めしくれにやはあらぬ
1195 夕暮れに命かけたるかげろふのありやあらずや問ふもはかなし
1196 あぢきなくつらきあらしの声も憂しなど夕暮れに待ちならひけむ
1197 頼めずは人を待乳の山なりと寝なましものをいざよひの月
1198 何ゆゑと思ひも入れぬ夕べだに待ち出でしものを山の端の月
1199 聞くやいかにうはの空なる風だにも松に音する習ひありとは
1200 人は来で風のけしきも更けぬるにあはれに雁のおとづれてゆく
1201 いかが吹く身にしむ色の変るかな頼むる暮れの松風の声
1202 頼めおく人も長柄の山にだにさ夜更けぬれば松風の声
1203 今来むと頼めしことを忘れずはこの夕暮れの月や待つらむ
1204 君待つとねやへも入らぬ真木の戸にいたくな更けそ山の端の月
1205 頼めぬに君来やと待つ宵のまの更けゆかでただ明けなましかば
1206 帰るさのものと人のながむらむ待つ夜ながらの有明の月
1207 君来むといひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る
1208 衣手に山おろし吹きて寒き夜を君来まさずはひとりかも寝む
1209 逢ふことはこれや限りのたびならむ草の枕も霜がれにけり
1210 馴れゆくは憂き世なればや須磨の海人の塩焼き衣まどほなるらむ
1211 霧深き秋の野中の忘れ水絶えまがちなる頃にもあるかな
1212 世の常の秋風ならば荻の葉にそよとばかりの音はしてまし
1213 足引きの山のかげ草結びおきて恋ひやわたらむ逢ふよしをなみ
1214 東路に刈るてふ茅の乱れつつつかのまもなく恋ひやわたらむ
1215 結びおきし袂だに見ぬ花すすき枯れるともかれじ君し解かずは
1216 霜の上に今朝降る雪の寒ければ重ねて人をつらしとぞ思ふ
1217 一人伏す荒れたる宿の床の上にあはれ幾夜の寝覚めしつらむ
1218 山城の淀の若鷹かりに来て袖濡れぬとはかこたざらなむ
1219 かけて思ふ人もなけれど雄されば面影絶えぬ玉かづらかな
1220 偽りを糺すの森のゆふだすき掛けつつ誓へわれを思はば
1221 いかばかりうれしからましもろともに恋ひらるる身も苦しかりせば
1222 わればかりつらきを忍ぶ人やあるといま世にあらば思ひ合わせよ
1223 ただ頼めたとへば人の偽りを重ねてこそはまたも恨みめ
1224 つらしとは思ふものから伏柴のしばしもこりぬ心なりけり
1225 頼めこし言の葉ばかりとどめおきて浅茅が露と消えなましかば
1226 あはれにも誰かはつゆも思はまし消え残るべきわが身ならねば
1227 つらきをも恨みぬわれに習ふなよ憂き身を知らぬ人もこそあれ
1228 何かいとふも永らへじさのみやは憂きに堪へたる命なるべき
1229 恋ひ死なむなほも惜しきかなおなじ世にあるかひはなけれど
1230 あはれとて人の心のなさけあれな数ならぬにはよらぬ歎きを
1231 身を知れば人のとがとは思はぬに恨みがほにも濡るる袖かな
1232 よしさらば後の世とだに頼めおけつらさに堪えぬ身ともこそなれ
1233 頼めおかむたださばかりを契りにて憂き世の中の夢になしてよ



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